良縁-その先の人生を見つめて

第6章 三十五年の歴史の重み ― 父、宮原嘉寿のこと

家族総出で手伝っていた仕事

私には年が離れた兄と姉がいます。兄はコンピュータが得意でしたし、姉もタイプライターの時代から手伝うなど、家族総出で手伝っていました。私も運転手役や写真撮影など、学校時代からいろいろなことをやらされました。そうやっていろいろ経験させるときには、父は決して途中で助けません。たとえば、高校生くらいのときに「会議場を確保してこい」と言われ、交渉して確約をとってきたことがあります。ところが、父にそれを報告すると「どうして手付金を置いてこなかったのだ!」と怒るのです。「口約束だけではだめだ、お金を渡さなければ権利が派生しないだろう!」というのです。そこですぐに先方に改めて出向き、お金を渡してこなくてはなりませんでした。学生時代にはたいへんだと感じていましたが、そのときの経験が、今いろいろな形で役立っています。
父が考えていたことは、常に二十年くらい先をいっていたような気がします。インターネットについても、何年も前にその理論について話し、普及を予見していました。兄に、「これからぜったい鍼灸師が増えるから、免許をとれ」と言ったのも父で、兄はその言葉にしたがって、鍼灸師の免許をとりました。コンピュータ好きの兄に、彼の免許を生かして、たとえば胃が痛いときにはどこにお灸をすえたらいいのか、どこにツボがあるのかといったソフトを作れとも言っていました。実際、二十年後の現在、そういったソフトがすでに作られ、販売されているそうです。時には、先を見すぎて変わり者と思われていた節もありました。でも、私はたまに父が言っていたことを現在にあてはめて行動してみるとぴったりくるということを何度も経験してきました。常にいろいろな発想が頭をめぐっていた人だと、今になってつくづく思います。

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